2017年10月14日土曜日

10/14 講座【親になる】不妊・里親と養子縁組・妊娠に悩む妊婦さんの支援・バースマザーさんのお話会 

10/14(土)静岡大学教授の白井千晶先生による連続講座【親になる】が開催されました。「不妊」、「里親と養子縁組」、「妊娠に悩む妊婦さんの支援」、「バースマザーさんのお話会」と、一日がかりの講座です。




■ 一限目の「不妊」では、不妊治療をする夫婦の内面に焦点を当てたお話を伺いました。この治療は、お金もかかるし、身体的にも負担がかかりますが、それ以上に、当事者は、心も大きく揺さぶられます。結果として、子どもを授かる夫婦もあれば、治療をやめて違うステップに進む夫婦もいる。では出産を終えた母親は、不妊治療から心理的に卒業できるか、というと、そう単純でもないそうです。

また、ひとくくりに「不妊治療中」と言っても、思いはひとそれぞれ。「夫婦で子育てができればいい」という人もあれば、「妊娠・出産を体験したい」という人も。それぞれの思いは、誰に否定されるものでもないのはずなのに、率直な思いを言い出しづらい環境が、日本の現状のようです。

「本当はこうしたい。」「本当は、つらいからやめたい。」本音を誰かにつぶやける、誰かの本音を受け止める、話ができる場や、文化が求められていると感じました。

■ 続いて二限目は、「里親と養子縁組」。日本の養子縁組、里親制度の歴史から、現在の状況をお話しいただきました。

世界基準では、家庭で育てられない子どもの里親委託率は6~7割に対し、日本は2割以下。日本では、まず「施設へ」というのが現状です。お隣の韓国は、政府が大きな改革を行い、現在では5割超の子どもが家庭で育っているそうです。

国連の指針では、実親が子どもが育てられない場合の代替的養育として、安定的・継続的・恒久的なものから優先されるとしています。また、できるだけその子を生まれた環境から離さず、実親とつながりを保ちながら、その子自身の混乱を最小限にとどめるように勧めています。


子どもの尊厳と育ちを第一に考える。そのために周りの大人ができることを、みんなで考える。それほど難しくなさそうで、海外の国々では行われていることが、今の日本では、実践されていないようです。

■ 三限目は、養育困難な妊婦の支援について。一般に「望まない妊娠」「予定外の妊娠」といわれますが、実際に一人一人にお話を伺うと、「望んでいた」あるいは「予定していた」が、長い妊娠期間中に状況が変わり、育てることが難しくなってしまったという妊婦さんも少なくないそうです。

日本では、福祉はあるのですが、困っている妊婦さんにとっては、それらの制度は利用しづらい状況のようです。また、世間からの視線も冷たく、非難されるのは女性ばかり。

海外の実践として紹介されたのが、ドイツのベビークラッぺ。2013年に成立した「内密出産法」は、匿名で十分な医療の元、国の費用負担で安全に出産し、育てられない場合も子供の安全が守られる仕組みです。アメリカの「Safe-haven」法は消防署や病院に安全に赤ちゃんを預けることを定めた法律です。子どものいのちを大切にしたい、社会の宝物であ
るという思いが、形になっています。

さらに、若い女性が妊娠して自分で育てていきたいという場合の支援の実践として紹介されたのが、アメリカのフローレンス・クリッテン高校(http://florencecrittenton.dpsk12.org) 
。十代の妊婦さんと母親のみ入学できる、公立高校です。子供のケアだけでなく、若年妊娠を経て今後シングルマザーとなる生徒を励まし、力づけ、しっかり自立できるような教育とケアが実践されています。

そして韓国のエランウォン http://www.aeranwon.com/。妊娠中から、2年間無償滞在できる母子寮。資格取得や、同じ境遇の仲間との出会いを通して、今後長い未来を社会で自分で歩めるような支援されています。 

日本には一か所、出産前後に特化した、慈愛寮(東京)という婦人保護施設があり、安心してお産を迎え、その後の自立のためのサポートがあります。

また、円ブリオ基金センター(https://www.embryokikin.com/)は、妊婦さんに安心して産んでもらうための基金によって、出産前の妊婦さんへの支援を行っています。 
他にも様々な民間の支援があります。


■ 四限目は「バースマザーさんのお話会」。まずは、この日午前9:25~10:25に愛知・岐阜・三重三県で放映された中京テレビのドキュメンタリー番組「マザーズドキュメント
特定妊婦 女だけが悪いのか」を視聴。番組ディレクターさんが名古屋からいらしてくださいました。(Umiのいえも登場します!)

民間の養子縁組支援団体の活動と、いわゆる危機的妊娠にある女性(「特定妊婦」と呼ばれます)の妊娠・出産の現状、養子を迎える家庭。

そして、この番組にも登場される生母(バースマザー)さんに直接お話しいただきました。彼女は数年前にご自身のお子さんを養子として託しました。結婚を予定していた幸せな妊娠中に予想外のトラブルに見舞われ、困っていたときに養子縁組のことを知り、出産され
たそうです。

率直な経験談を伺ったあと、保育士、助産師、不妊治療当事者のご夫婦、高校教員等、それぞれの立場で、思いを分かち合いました。

最後に、白井先生からお話をいただきました。

「私たちは生きているのに、こういう生々しい話をする機会が少ない。

『すごく生みたい』とか、『授からない』とか、『こんな子育てをしたい』とか、あるいは『どんな夫婦になりたいのか』『何のために結婚したのかな』と悩んだり…本当は人生ってすごく生々しいんです。

そういう生々しい悩みを相談できなかったり、「私はこういう経験をした」という話をしづらい世の中です。

“袖振り合う仲”な隣の人とでも、ちょっとずつ話ができることが、産めない人も、託す人も、子どもも、みんな幸せになっていく世の中に近づいていくのかなと思います。

里親さんや養親さんも、生んだ人のことをもっと知りたいし、子供にも伝えたい。そうじゃないと子どもも、「生まれてきてよかった」って心の底から思えないかもしれない。

みんながちょっとずつ、他人の人生に関わっていくいいこと、みんながちょっとずつ、他人の人生を知っていくことが、とっても大事なんじゃないかなと思いました。

本当に今日は、出会えてよかった。また一緒に話がしたいなと思います。」

「親になる」講座は、白井先生からのレクチャーだけではなく、それを受けて、参加者が自由に意見を交換し合う場です。そうすることで、一人一人の世界が広がり、他者に対して思いを寄せて、昨日より少し、優しくなれる。

たくさん涙を流し、言葉にならないながらも、ぽつりぽつりと、気持ちを交わし合う。

これからも、一人でも多くの方にご参加いただきたい講座です。(西岡妙子)

前回(2017年7月23日開催)の様子はこちらです。http://www.uminoie.org/2017/08/723.html 

フォスター 写真と言葉でつむぐプロジェクト

里親家庭・ファミリーホーム・養子縁組家族の写真展+トークイベント。
白井千晶先生、写真家・江連麻紀さん、umiのいえ女将・齋藤麻紀子、の有志3人によるプロジェクトです。


●参加者の感想です
・不妊治療や養子について、学べる場やつながれる場があると聞いて来ました。
こういったつながれる場や、安心して話をしてもいい場所があることは、とてもありがたく勉強になりました。
女性が一番悩む場所で、男性の私が参加してもいいのか、少し不安でしたがとても雰囲気が良かったので、安心して参加できました。
当事者のお話も聞けて、養子・里子に出す側の事情なども聞け、より多角的に自分達が選択するための情報をいただきました。夫婦でよく考えて、結論を出したいのですが、色々考えても結論は出ないかもしれませんが。。夫婦で本気で話し合える機会を持てるきっかけになりました。

・不妊、養子縁組、里親、危機的妊娠、バースマザー、育てている方のお話、中京TVさん 盛りだくさんで、なかなか言葉にならないですが、いろんな「種」を頂きました。
これから、この種を育てて、周囲の人たちとシェアしていきます。
そしてバースマザーさん(産んで託した人)のお話を聞かせて頂けたことが本当に、感謝です。
想いをシェアしてくださったこと、大切にして、手を伸ばせない女の子、伸ばし方が分からない女の子に届くような活動をしていこうと思います。あー、素敵な一日でした。

・フル参加2回目です。前回から+αされたところもあり、新鮮な気持ちで学ぶことができました。
切ない、切ない、切ない の一言に尽きます。若くてかわいい女の子が泣かなくて済むように、私にできることは何か?と考えています。
女だけが悪いのか?というけれど、女も男も「悪い」ということはないように思います。批判的な声は大きいようですが、知れば、知るだけで、そんな気持ちはなくなるように思います。楽観的過ぎるかな?

・不妊、里親、生母、、、知りたかったけど、正直マイナスなイメージしかなかった。でも、今日来て、本当に良かったです。妊娠を通して苦しくて、不安で泣いている女性がうれし涙を流せる世界がある!20年後、30年後、50年後、妊娠を苦しむ女性が少なくなるために、私も力を尽くしたいと思いました。また受けたいと思います。P.S。2年強、Umiのいえに通い続けていますが、初めて泣きました。しかも、大泣き!いのちはすばらしい。

・今日は本当にありがとうございました。家族・子育て・生きる、だれにでも存在する身近な事、当たり前と思っていた事にも、様々な形がある事をあらためて感じ、自分自身の認識を変えていく必要も感じたし、自分には何ができるのか?という問いも生まれました。じっくり考えたいと思います。

・当事者の方の話を聞ける場はなかなかないので、気持ちを伺うことができてよかったです。今日聴くことができた内容と、考えたこと、周囲にどう伝えられるか。模索していきたいです。

・Umiのいえの空間で、ゆっくりと講義をうけられたこと、その環境にまず感謝です。
現在、大学病院という、一般社会からみるととてもせまい中にいるので、概念的な事から、今、社会で起きている現実の事まで、聴くことができて、今まで、臨床の中で、経験してきた物事が、消化できてきました。しかし同時に、知らないことが多くて、全ての対象者に満足ができるケアを提供できているか不安にもなりました。自らの力不足を痛感しています。当事者の方の声を直接きくことが出来て、本当に必要としている(されている)事が、いくつか知ることができ、これからの社会のあり方や、そのために一個人として、何ができるのか、これからの人生を歩んでいく上でも、考え、行動していければと思います。一人の女性としても、しっかり前を向ける一日でした。

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